第88回日本IC

第88回日本IC

大会の見どころ

日本ICとは

学生陸上最高峰を決めるチーム戦

  天皇賜盃日本学生陸上競技対校選手権大会、通称「日本IC(日本インカレ)」は、全国の学生陸上競技者が大学の威信をかけて競う、日本学生陸上界最高峰の大会です。100mをはじめとする短距離種目から、長距離、跳躍、投てき、混成競技、そしてリレー種目まで、男女合わせて44種目の学生チャンピオンが決まります。全国からハイレベルの参加標準記録を突破したトップレベルの学生アスリートが集結する機会は、毎年6月に行われる日本学生陸上競技個人選手権大会(日本学生個人)と、この日本ICのみ。記録だけでは測れない、トップアスリートの真剣勝負によって「真の王者」が決まります。
  そして、個人での学生日本一決定戦である日本学生個人との大きな違いが、出場している各大学には種目ごとの順位に応じた対校得点が与えられること。全ての種目の対抗得点を足し合わせて、総合得点が最も高い大学には男子に「天皇賜盃」、女子に「秩父宮賜杯」が授与されます。個人と個人の勝負、自己の記録への挑戦という色合いが強い日本学生個人に対して、日本ICは、大学の看板を背負いその威信を懸けて争う「チーム戦」。出場する選手、応援する選手・チームスタッフを巻き込んだ総力戦が感動を生みます。

様々なドラマを生んできた90年

  日本ICが始まったのは今から91年前のこと。1928年5月27日午後0時30分、各校の部旗を手に入場行進した43校、562名の選手が神宮外苑競技場のトラックに整列。御臨席の秩父宮殿下より「純真なる学生精神をもってアマチュアスポーツの正しき道に進み、範を天下に垂れよ」とのお言葉を賜り、第1回日本ICが開幕しました。その年のアムステルダム五輪三段跳で全ての競技を通じて日本人初の金メダルを獲得した織田幹雄(早稲田大)が走幅跳の日本記録を作るなど上々の幕明けを飾った「学生日本一決定戦」は、その後、戦争による中断等も経ながら87回にわたり数多くの歴史を紡いできました。2017年に福井で行われた第86回大会で、桐生祥秀(東洋大)が日本人初の100m9秒台をマークしたのは記憶に新しいでしょう。
  90年の歴史の中で、日本ICは様々なドラマを生んできました。一人一人の選手が築いてきたドラマが、それぞれの大学の歴史を織り成してきました。そして、多くのトップ選手たちが、この大会から世界に羽ばたいていきました。88回目を数える今年、どんな名勝負、好記録が生まれるのか。そして、その熱い戦いの中で、1年後に迫った東京オリンピックで活躍する選手がどれほど生まれてくるのか。その一瞬が、歴史になる。第88回日本IC、まもなく開幕です。

世界で活躍した学生アスリートが岐阜に集結!

38年ぶりに、日本ICが岐阜に上陸

  今年の日本ICの舞台は、岐阜メモリアルセンター長良川競技場。日本ICが岐阜県に上陸するのは、1981年の第50回大会以来38年ぶり。第50回大会は国立競技場をメイン競技場として混成競技のみを岐阜で行ったので、岐阜のみでの開催となると、1954年の第23回以来実に65年ぶりとなります。徳川幕府の成立を確実にした関ヶ原の戦いが岐阜で行われたのは、慶長5年9月15日(旧暦)。第88回日本ICの優勝校が決まる最終日は同じ9月15日。400年以上の時を経て、「天下分け目」の勝負が決します。

ユニバーシアード代表が凱旋

  今年は2年に一度行われる「学生のオリンピック」、ユニバーシアード競技大会が、7月にイタリア・ナポリで行われました。陸上競技日本代表チームは、男子4×100mRの2連覇、男女ハーフマラソンの両種目メダル独占をはじめ、金メダル8個、銀メダル6個、銅メダル5個という過去最高の成績をマークしました。
  日本ICでは、日の丸を背負って世界で活躍した学生アスリートたちが、今度は各大学の代表として再び相まみえることになります。個人種目で金メダルを獲得した選手では、男子ハーフマラソン金メダルの相澤晃(東洋大)が男子5000mに、男子走幅跳金メダルの橋岡優輝(日本大)が男子走幅跳に、女子ハーフマラソン金メダルの鈴木優花(大東文化大)が女子5000mと10000mの2種目にエントリー。他にもユニバーシアードのメダリスト・入賞者が多数出場します。過去最高成績を残した「史上最強世代」の学生日本代表選手たちがどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。期待が高まります。

第88回日本IC、この種目が熱い!

活況の男子種目

  今年の陸上界は、男子種目で好記録が続出しています。その筆頭を行くのが、男子走幅跳。8月に福井で行われた大会で、20年以上破られてこなかった不滅の日本記録8m25を、1時間にも満たない間に二人の選手が上回るという快挙が達成されました。その快挙を先導したのが、橋岡優輝(日本大)。8m32の好記録をマークし、止まった時計の針を動かしました。同じ競技会の中で実業団の城山正太郎(ゼンリン)によって8m40と更に日本記録を更新され、一瞬だけの日本記録保持者となった橋岡。その悔しさを晴らすため、日本ICでは更なる日本記録更新を狙います!しかし、男子走幅跳の注目選手は橋岡だけではありません。同じ福井の大会で、従来の日本記録にあと2センチと迫る8m23をジャンプした津波響樹(東洋大)、5月の関東ICで橋岡を上回る2位に入った泉谷駿介(順天堂大)と、役者揃い。史上最高レベルの空中戦を、ご覧あれ。
  そして、その泉谷が、走幅跳だけではなく、今年はノリにノっているんです。関東ICで110mHと三段跳の2冠、走幅跳は2位と縦横無尽の活躍を見せると、6月の日本選手権110mHでは、当時日本タイ記録となる13秒36の好走。その後、日本記録は高山峻野(ゼンリン)によって13秒25まで縮められていますが、岐阜ではその日本記録に迫る好走に期待です!
  他にも、今大注目の男子100mでは、ユニバーシアード入賞の宮本大輔(東洋大)とドーハ世界選手権リレー代表候補の坂井隆一郎(関西大)あたりを軸に、こちらも10秒1台も狙えるようなハイレベルの争いとなりそうです。

群雄の女子種目

  男子が「活況の男子」なら、女子は「群雄の女子」。ハイレベルの選手が何人も揃い、まさに群雄割拠の争いが繰り広げられそうです。その中で、昨年気を吐いたのが、広沢真愛(日本体育大)。200m、400mの個人種目2冠を達成すると、4×100mRと4×400mRの両リレーにも出場し、そちらも制覇。見事4冠を達成しました。しかも、4×100mRでは日本学生新記録を樹立。まさに大車輪の活躍を見せました。今季前半はやや苦しみましたが、それでも7月のユニバーシアードでは200m、4×100mR、4×400mRの3種目に出場。4×100mRは見事決勝5位入賞に導きました。今年はどんな活躍を見せてくれるのか、期待です。
  大記録の「壁」に挑む種目が、女子800m。現在の日本記録は、2分00秒92。ここ数年、夢の「1分台」を目指したチャレンジを繰り返しているのが、同学年の関西勢ライバル同士である塩見綾乃(立命館大)川田朱夏(東大阪大)。2年前に山形で行われたインターハイ決勝で、塩見が2分02秒57、川田が2分02秒74と、ともに高校新記録で決着したのは、陸上界に衝撃をもって迎えられました。その勢いは大学入学後も衰えることはなく、昨年の日本ICでは塩見が見事1年生ながら優勝を飾りました。現在のこの種目の日本学生記録は、2年前、福井の日本ICで北村夢(日本体育大)が出した2分00秒92。その記録を破り、「2分の壁」を超えた先にある景色を、最初に見るのは誰なのでしょうか。

チームの絆。そして、総合優勝争いの行方は…

「マイル」が感動を呼ぶ

  日本ICの最終種目は、4×400mR。通称「マイルリレー」。4人が1人400mずつを走るこの種目は、大会のフィナーレを飾る種目であると同時に、最後まで総合得点争いがもつれた場合には、全ての運命を決する種目ともなります。実際に、近年の日本ICでは、最終種目を前に総合得点が同点で、マイルリレーで先にフィニッシュした方が総合優勝という年すら見られました。400mという距離の中で極限まで力を振り絞り、100分の1秒でも早くバトンをつなごうとする選手の姿は、感動を禁じ得ません。
  チームがまさに一つになるこの種目で、日本ICはクライマックスを迎えます。今年、最後に笑うのはどの大学なのでしょうか。

総合優勝は、どの大学に!?

  日本ICの最大の栄誉は、男女それぞれの総合優勝。今年の日本ICでその栄誉に浴する大学はどこなのか。近年を見てみると、男子は日本大学が現在7連覇中。順天堂大学や東海大学などが追いますが、今年の関東ICも制して、8連覇に向けた足場を着々と固めています。女子は、筑波大学が2連覇中。しかしながら、2015年の立命館大学初優勝、2016年の大阪成蹊大学初優勝と、ここ最近では関西勢の活躍も目立っています。更にはここ数年、関東ICでは筑波大学をぎりぎりまで追い詰めている日本体育大学も力があり、優勝争いは最後までもつれるかもしれません。天皇賜盃・秩父宮賜杯は誰の手に抱かれるのか。勝負が決するのは、9月15日です。